数字で見る自治体差|絶縁抵抗5MΩ→100MΩ・耐震計算書の重量閾値・配電盤の色
はじめに
前回の記事では、自治体の設備仕様書には「フル独自型」「準拠+差分型」「特則型」の3つの型があるという話をしました。
今回はもう少し具体的に、同じ項目なのに自治体によって数値がまったく違うという例を3つ紹介します。いずれも、国交省の官庁営繕・自治体の施工要領書・標準仕様書の元PDFを直接確認したうえで、出典(自治体名・文書名・年版・ページ)を明記しています。
⚠️ 仕様書は年版によって内容が変わります。この記事の数値は執筆時点(2026年7月)で筆者が確認できた版のものです。実務では必ず最新版・当該工事の特記仕様書・監督職員の指示を優先してください。また、測定条件や対象範囲が異なるケースもあるため、単純な「厳しい/緩い」の優劣比較として鵜呑みにしないようご注意ください。
1. 絶縁抵抗値:5MΩ→10MΩ→100MΩ
低圧配線の新設時の絶縁抵抗値(開閉器等で区切ることのできる電路ごとの基準値)は、国の標準ではこう決まっています。
「開閉器等で区切ることのできる電路ごとに5MΩ以上とする。ただし、機器が接続された状態では1MΩ以上とする。」 —— 国土交通省『公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)』令和7年版 p.92
これに対して、名古屋市上下水道局(浄水場・ポンプ場等向け)の工事共通仕様書ではこうなっています。
「配線の電線相互間及び電線と大地間の絶縁抵抗値は…開閉器で区切ることのできる電路ごとに、10MΩ以上とする。」 —— 名古屋市上下水道局『工事共通仕様書(電気設備工事編)』令和4年8月版 p.123
さらに厳しいのが札幌市です。市庁舎・学校等向けの電気設備工事仕様書では、なんと100MΩ以上を要求しています。
「新設工事における絶縁抵抗は、開閉器で区切ることのできる範囲毎に電線相互間及び電線と大地間について測定し、100MΩ以上とする。」 —— 札幌市都市局建築部『電気設備工事仕様書』令和8年版 p.64
国交省基準を1とすると、名古屋市上下水道局は2倍、札幌市は20倍という開きです。同じ「新設時の絶縁抵抗」という項目でも、これだけ差があります。なお、北九州市の施工要領(p.15)では「絶縁抵抗値が低い場合(概ね10MΩ以下)は監督員に協議」という記載があり、こちらは新設時の合格基準ではなく既設設備の異常検知の目安として使われているため、単純に他都市の新設基準と並べて比較できるものではない点も申し添えておきます。
2. 耐震計算書が必要になる重量:100kgと800kg
キュービクルや分電盤などの機器を据え付けるとき、「重量が一定以上なら耐震計算書の提出が必要」というルールを設けている自治体は多いのですが、その閾値がかなり違います。
北九州市の施工要領では、100kgという閾値です。
「キュービクルや分電盤等、100kgを超える機器の取り付けについては耐震計算を行い、承諾図に添付し監督員の承諾を受けたのち施工する。」 —— 北九州市都市整備局設備部電気設備課『電気設備工事施工要領』令和8年度版 p.29
仙台市の設備工事施行要領(機械設備工事編)も、ほぼ同水準です。
「耐震設計,施工は,100kg以上の重量機器の据付け,取付けに適用し,設計用水平震度,鉛直震度により,アンカーボルト,ストッパー,架台,基礎等の検討,選定を行う。」 —— 仙台市都市整備局設備課『設備工事施行要領(機械設備工事編)』令和8年4月以降版 p.11
一方、大阪市(下水道施設向け)の一般仕様書では、800kg以下・アンカーボルトM8以上4本以上という条件を満たせば、耐震計算そのものを省略できるという規定になっています。
「機器の質量が800kg以下(アンカーボルトM8以上、4本以上)で、「建築設備耐震設計・施工指針」に記載されている、設計用水平震度と設備機器等の縦横比による許容質量のグラフが適用できる場合、耐震設計を省略することができる。」 —— 大阪市建設局『下水道施設機械電気設備工事編』第1章一般事項 p.11
「100kgを超えたら計算書が要る」自治体と、「800kg以下なら条件付きで計算を省略できる」自治体とでは、見積りや工程の組み方に直結する差になります。他所の現場を受けるときは、この閾値を最初に確認しておくと手戻りを防げます。
3. 配電盤の色は、なぜかどこも同じ「5Y7/1」
数値の話からは少し離れますが、面白い一致もありました。配電盤・動力制御盤の塗装色(マンセル記号)です。
- 鹿児島市水道局: 「塗装色は,原則として5Y7/1(マンセル記号),K25-70B」(第3章電気設備工事 p.48)
- 神戸市建設局: 「配電盤、動力制御盤、現場操作盤=F25-70B、5Y7/1」(下水道設備機械電気工事一般仕様書 第3章機械設備 p.52)
- 名古屋市上下水道局: 「塗装色は、屋内屋外とも5Y7/1とする」(工事共通仕様書 電気設備工事編 p.114、p.12にも同様の記載あり)
- 仙台市都市整備局設備課: 「塗装色は指定色とする。指定のない場合は,屋外盤はJEM1135マンセル5Y7/1,屋内盤はマンセル2.5Y9/1とする」(設備工事施行要領 電気設備工事編 p.10)
鹿児島市・神戸市・名古屋市・仙台市(屋外盤)が、互いに参照し合っている様子もないのに同じマンセル値「5Y7/1」にたどり着いているのは興味深い一致です。日本塗料工業会の色標番号の接頭文字(鹿児島市はK25、神戸市はF25)だけが版年で揺れていて、色そのものは実質同じという点も含めて、業界の「事実上の標準色」になっていることがうかがえます。
なお仙台市だけは屋内盤に別の色(2.5Y9/1)を指定しており、屋内外で塗り分けている点は他の自治体と違う特徴です。この手の「なぜか全国で同じ」規定は、条文の理屈だけでは説明がつかない面白さがあります。
まとめ
同じ「絶縁抵抗」「耐震計算書」「塗装色」という項目でも、自治体によって数値・閾値・色指定が想像以上に違います。他所の自治体の仕事を受けるときは、「国交省標準ならこう」という思い込みのまま進めず、該当する項目だけでも一度、その自治体の仕様書に当たっておくことをおすすめします。
繰り返しになりますが、仕様書は改定されます。この記事の数値をそのまま使わず、必ず最新版・当該工事の特記仕様書・監督職員の指示を確認してください。
→ 自治体・国交省の仕様書の公式リンク一覧は 参照元リンク集 にまとめています。
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